・急速な円安が続いたのは、世界中の中央銀行が利上げを行う中で、日本銀行が10年近くにわたって続けてきた大規模な金融緩和政策から脱却できないから。(p3、17)円の実質的な購買力を示す実質実効為替レートは(2010=100)は22年6月で59.16、1971年8月が58.41なので、固定為替レートの時代まで戻ったことになる(p17)
・輸入額が企業の原価の中でどのくらいの比率を占めているかをみると、2020年度の輸入額64.9兆円(金融機関除く全産業)売上原価は1016兆円、部品を生産する企業の売上が、組立企業の原価となっている、これらはキャンセルアウトされる、日本全体を企業とすると、企業の売上はGDPプラス輸入額となる、輸入額が10%上昇すればGDPの上昇率は1.1%となり、経験則と一致する、これは原材料価格の輸入価格の上昇が、ほぼ100%消費者物価に転嫁されたと考えることができる(p29)それにも関わらず、価格の上昇率は、原材料が10%、中間材が5%、最終材が2.5%となる、こうなるのは川下に行くほど売上高に占める原材料費の比率が低下するから(p39)
・アベノミクスが始まった13年には製造業の海外生産比率は21年とほぼ同じ水準になっているので、円安になっても輸出が増えない、ドル建ての輸出は2012年に7986億ドルとなってからはそれを上回ることはなかった、20年は6413億ドル(p47)今回の円安が従来と異なるのは、原材料価格の上昇を製品価格に転嫁できないことである(p48)
・売り上げはほとんど変わらないのに、営業利益は顕著に増加する理由は、営業利益の大きさは売り上げに比べて、はるかに小さいから。売上が僅かでも変動すると営業利益は大きく変動する(p57)円安がもたらしているのは、家計の負担に基づく一時的な営業利益の増加に過ぎない(p60、68)
・2012年から15年にかけて実質賃金指数が下がったのは、たまたま起きたことではなく、企業が輸入価格の上昇を転嫁した結果である、15年から17年頃には原油価格が大幅に低下したが、この大部分を消費者物価引き下げに転嫁しなかったので、企業の利益は大幅に増加した(p65)
・日本とアメリカの金利差が拡大すると、円で資金調達してドルで運用するという取引(円キャリー取引)が増大し、円安が加速している。いずれ長期金利を上げざるを得なくなる(p117)低金利を継続すれば円キャリー投機に利益を与え、金利上昇を容認すれば国際先物売り投機に利益を与えることになる、そして日銀が債務超過になる(p119)
・コロナ対策でコロナ関連予算は急膨張、このほとんどが国債で賄われた、17−19年度まで336兆円〜366兆円と推移してきたが、20年度には1086兆円、残高は、19年末の8867兆円から9466兆円に増加した、21年度末には9903兆円(p137)
・2012年12月にエルピーダメモリ(NEC、日立のDRAM事業を統合)が会社更生法の適用を申請し、製造業としては史上最高の負債総額、4480億円で破綻した(p160)
・22年6月における雇用調整助成金などの支給総額は、5.8兆円、これはリーマンショック実績の2009:0.65,2010:0.32兆円を大幅に上回る。雇用調整助成金の財源は企業が拠出した保険料収入(雇用安定資金)の1.5兆円(コロナ前)で雇用保険全体で約6兆円あった。財源が枯渇して、一般財源も投入された、積立金が底をついたので、23年度の料率は、労働者を0.5%、事業主を0.85%とすることが予定されている(p172)
・コロナ禍で露呈したデジタル化の遅れは、組織ごとに別々のシステムがうまく連携できない、政府各省庁は個別の専用回線を使っているので、相互のテレビ電話会議ができな、自治体のデータシステムはバラバラでデータ交換ができない、これが縦割り社会が抱える深刻な問題である(p184)
・メタバースを、リモートワークの新しい手段として、距離を克服する手段として使うという視点が必要である、仕事用のメタバースである(p203)その一例として、デジタルツイン(現実と同じ工場を遠隔地にデジタルで再生、創業する、医療の遠隔運営等)(p204)
・ブロックチェーン技術を利用すると、管理者がいなくても自律的に運営される組織、つまりDAO(分散型自立組織)が可能となる、条件に応じて自動的に反応し、意思決定をするので、管理者・経営者が不要となる。DAOは人々の働き方を大きく変えるとともに、既存の法体系や社会の仕組みに大きな変更を迫る(p209)
・労働者の有無、経営者の有無によって、4つの会社が類別される、両方ともいるのが従来の会社、労働者のみいないのが、ロボットを使う会社、経営者のみがいないのがDAO、両方いないのが、AIとブロックチェーンによる完全自動会社である。(p211)
・日本の高等教育の問題は、大学進学よりも大企業就職の方が得であること、大卒小企業の年収と高卒大企業の年収で、大卒が上回るのは60歳以降(p219)大学進学率が、欧米と比較して低い日本では、大学進学コストを取り戻すのに30年間かかる(p225)その理由として、1)年功序列的賃金体型のため、大学卒と高校卒の間で、若年期の所得格差が小さい、2)専門家への知識への報酬が少ないこと(p230)
2023年2月18日読了