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基軸通貨ドルの落日 トランプ・ショックの本質を読み解く (文春新書)

基軸通貨ドルの落日 トランプ・ショックの本質を読み解く (文春新書)の写真

・第二次トランプ政権が企てているのは、既存の国際経済秩序、とりわけ国際通貨体制を再編することである、しかしこの企ては必ず失敗する、リベラルな国際経済秩序を復活させるのではなく、その崩壊を決定づける、戦後のドルを基軸通貨とする国際経済秩序が終焉を迎える可能性がある(p15)人々は関税に目を奪われているが、トランプショックの本質は、関税ではなく「通貨」にある、通貨というレンズを通して見れば(ドルを切り下げようとしている、p19)世界で何が起きているか、よりはっきり見えてくるであろう(p16)

・基軸通貨国であるアメリカは、各国に準備通貨ドルを供給し続けなければならないため、経常収支の赤字が続く。アメリカの輸入が多すぎるからではなく、世界に準備通貨を供給する必要があるから経常収支は赤字になっている(p21)

・ニクソンはアメリカの輸入品に対して10%の課徴金を課し、他国に対して自国通貨の切り上げを迫った、トランプも2025年4月2日10%の一律関税を導入したが、ミランは関税を他国に自国通貨を切り上げさせる手段として論じている、ニクソンが課徴金を導入した根拠法は、第一次世界大戦中の戦時立法である「対敵通商法」であった、トランプが追加関税の根拠としたのは、その後継法である「国際緊急経済権限法」である、トランプショックとは、ニクソンショックがそうであったように、既存の国際通貨体制を破壊し、アメリカに有利なものへ作り変えることである、そうだとするならば、トランプショックの本質は、関税にでなく通貨にある(p41)

・トランプはバイデン前政権の外交方針から大きく転換し、ウクライナ戦争の停戦交渉の仲介に乗り出したが、ロシア側を有利にするものと懸念されている、相互関税の対象から、ロシアとベルラーシは除外された、ニクソンがソ連との対決を有利に進めるために中国に接近したように、トランプは中国との対決に備えて、ロシアとの関係を改善しようとしているかもしれない(p42)

・アメリカに基軸通貨国としての特権があるとしたら、アメリカ以外の国は国際決済にアメリカの銀行システムを使わざるを得ない、つまり、海外の政府や企業のドル資産はアメリカ政府の管轄下(ドル資産を凍結可能)にある(p89)

・アメリカ以外の国は、対米経常収支黒字によって得たドルを運用する必要があるから、米国債を購入しているに過ぎない、アメリカ以外の国が米国債を保有しなければならない理由は、アメリカにではなく、むしろ対米経済収支黒字国の方にある(p103)

・ロシアがウクライナに侵攻したことで、アメリカは制裁としてロシアのドル資産を凍結した、中国はアメリカによるドル資産の凍結を恐れて、米国債を売却している(p105)

・アメリカが実施してきた「新自由主義=市場原理主義」とは、自由市場が最適な資源配分を実現するという信念を基本とする、小さな政府・健全財政・自由化・民営化・独立した中央銀行による物価の安定。国際資本移動の自由、これはケインズ主義を攻撃目標とした(p111)

・アメリカの貿易赤字は1985年のプラザ合意によるドル安にも拘らず拡大した、1988年にはドルの価値が半分にまで下がり、原油価格が急落したおかげで貿易赤字は縮小、1991年に大きく縮小したのは、アメリカが不況に陥って輸入が減少したのと、湾岸戦争によって日本、ドイツから巨額の戦費分担金を受け取ったからに過ぎない(p116)

・新自由主義は2つのレジーム(状況)をもたらせた、1)輸出主導レジームで、ドイツ・中国・日本・韓国・東南アジア、輸出の拡大にによって経済成長する、労働者の賃金をできる限り低く抑える、自国通貨の切り下げと同じように輸出競争力を強化した、労働組合は無力化、内需は低迷、2)外需を提供した、債務主導の国々で、アメリカ・イギリス・欧州周辺国である、所得が伸びなくても債務を増やして消費を拡大できた(p123)両者は対照的であるが、共通としては、賃金上昇が抑制で労働者所得は低迷するが、資本家・グローバル企業の利益は拡大し、所得格差が拡大する(p124)

・2014年のロシアに対する制裁、2010年代後半の米中対立の激化、2022年のロシアのSWIFTからの排除、さらに第二次トランプ政権による関税措置は、人民元の国際化を明らかに進展させている(p197)中国はロシアがクリミアを奪取した2014年以降、デジタル人民元の構想を進めている、暗号通貨とは異なり、中央銀行が発行する法定通貨である、この狙いはSWIFTを介さない国際送金を可能にすること(p198)