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超訳ケインズ経済学 経済に一人勝ちはあり得ない

超訳ケインズ経済学 経済に一人勝ちはあり得ないの写真

・ケインズの経済理論を知るには、当時の世界がどういう経済状態にあり、どういう問題を抱えていたのかを知る必要がある、ケインズの時代は、産業革命によって世界が豊かになる一方で、失業が社会問題として大きくクローズアップされていた、イギリスを中心とした帝国主義が盛んで、世界経済はルール無用の弱肉強食の強奪戦が繰り広げられていた。その中で人々が豊かに平穏に暮らすにはどうしたらいいのか、新たなルールや秩序を研究し世界に発信した(p5)

・ケインズの理論で主要なもの、1)ドイツに過酷な賠償金を課せば、やがて世界経済を崩壊させる、2)不況の時は国は赤字財政となっても、雇用を増やす財政投資をすべし、3)世界経済を安定させる新しい世界金融システムを作るべし(p24)

・第一次世界大戦は一応、連合国側(イギリス、フランス、アメリカ等)の勝利となっているが、中央同盟国側(ドイツ、オーストリア、オスマン帝国等)は、アメリカのウィルソン大統領の、無賠償・無併合を原則とする戦争終結に対する呼びかけに応じて停戦したものであった(p26)敗戦国の主要国は、ドイツ・オーストリア・オスマントルコであったが、オーストリアとオスマントルコは解体されたので、必然的にドイツに戦費が一手に請求されうことになった、連合国のロシアは、フランスなどの連合国に巨額の債務を負っていたものの、ロシア革命の後に建国されたソ連は、その債務の支払いを拒否した、そのためにフランスがドイツに求める賠償金が跳ね上がった(p29)

・ベルサイユ講和会議では、第一次世界大戦の責任は一方的にドイツにあると規定され、連合諸国が受けた損害を賠償しなければならないとされた、賠償金は1300億マルク、ドイツの税収の十数年分、日本で言うと1000兆円以上の負担感である、一人当たり800万円の賠償金、植民地は全て取り上げられ、人口10%失い、領土の13.5%、農耕地15%、鉄鉱石の鉱床75%を失った(p27)

・1918年2月、アメリカのウィルソン大統領が行った休戦のための基本条件は、無併合・無賠償・無報復であった、ドイツが休戦に応じたのは、この平和的な提案があったから、同年11月に連合国とドイツとの間で交わされた正式な休戦条約でも、ドイツが負担するのは損害の賠償であった、しかしベルサイユ条約は、この基本条件を全く破ったものであった、ドイツ側の要求(何度も旧連合国側に妥当な額の算出を要求)は受け入れられず、巨額の賠償を強いられることになった(p31)ケインズが安全な賠償金として算出した3倍以上の額(現在の日本円で200兆円)となった(p33)

・多くの賠償金を課せられたドイツ政府は、企業に対して特別税、相続税、贅沢品への課税など、ありとあらゆる課税をした、それでも追いつかず国債を発行し続けた、しかも賠償金の未払いを理由にフランスがルール地方を占領する事態が起き、これが引き金となってドイツにパニック的なインフレーションが生じた、マルクの対ドルの価値が1兆分の1になるものであった(p36)

・アメリカが当時の世界貿易の通貨である金(ゴールド)を溜め込んだ理由として、1)一国が貿易黒字を溜め込むことが悪いという認識がなかった、2)輸入をそれほど必要としないので、他国から買うものがなく金が貯まる一方であった(p44)

・ドイツの賠償金支払いの負担を軽減するために、アメリカ・ドーズ案が提案された、賠償金をマルクで支払うことができる「トランスファー保護規定」があった、それまでは相手国通貨で払うことが義務付けられていて、常に大量の外貨を保有しておく必要があった。さらにマルクが下落しないように、連合国が責任を持たなければならなくなった、そのためアメリカを始めとする欧米の資本がドイツに集まってきた(p49)

・1929年6月ヤング案で賠償金の額が大幅に減額(当初の3分の1)されたが、トランスファー保護規定は廃止、相手国の外貨で払わなくてはいけなくなった、ドイツは外貨を買わなければいけなくなった(p50)

・当時アメリカが持っていた連合諸国の戦債は約70億ドル、当時のアメリカのGNPの7%、リーマンショックの引き金となったリーマンブラザーズの負債総額はアメリカGDPの5%、ヤング案の発表はドイツ経済の破綻を予感させるものであった、発表の5ヶ月後にアメリカ株式市場が大暴落して世界は大恐慌となった(p54)

・東インド会社は東インドに持っている植民地の貿易を独占していた会社、欧州諸国は特定企業に独占貿易権を与えることで、他国が入ってくるのを阻止しようとした、植民地で取れる資源、農産物は全てその企業が独占した、その上、植民地に居住している人たちが欧米の産品を購入するときは、その企業から買わなければならなかった(p62)企業が独占状態を獲得する方法として、国や役人と結託する、法律・規制により公的に独占を認めてもらう(p63)

・今では景気対策として当たり前とされている「景気が悪くなったら政府が金利を下げる」という経済理論はケインズが提唱したが、以前の理論は、景気対策として金利を下げるのは常道ではなかった、金利を下げれば年金生活者など、金利で生活している人たちの収入が下がるから(p71)

・第一次世界大戦後にイギリスが戦前の平価で金本位制に復帰すれば、ポンドは現状より10%高く評価される、それは資産家にとっては有利だが、国民にとっては不利になる、資産家はポンドが高い方が自分の資産が目減りしないので有利、ポンドの価値はきんに固定されるため為替は安定する、ケインズは金本位制ではなく、管理通貨制を提言したがイギリスは1925年、戦前の平価で金本位制に復帰した(p73)

・政府がなすべきことは社会に必要だけど民間企業が決してやらないこと、1)通貨の計画的な統制、2)貯蓄・投資が適正規模になるように調整する、3)適度な人口を保つこと(p91)

・デフレよりインフレがまし、というのは「デフレが起きて失業者が増えるよりも、インフレが起きて金利生活者が困る方がまし」ということ(p97)経済政策とは失業を増やさないことが大事でそれを優先すべきだと言っている(p98)

・1931年にイギリスが、ポンドと金の交換を停止し、金本位制から離脱した、日本も同年に離脱、2年後にはアメリカもドルと金の交換を停止した、これにより世界各国は独自の通貨政策、貿易政策をとることになった(p132)

・資本の自由な移動(マネーゲーム)は短期的な投資が推進される、さらに、国内の金融政策が効かなくなるというデメリットがある(p143)

・アメリカドルは金と兌換しなくてよくなったので、アメリカの輸入は際限がなくなった、以前は輸入超過になれば金が流出していたので、金の保有量を睨みつつ輸入を制限する必要があった(p170)

・アメリカの対日貿易赤字が最も大きかったのは、1987年570億ドルだが、2023年の赤字は715億ドルで現在の方が赤字額は大きい、当時と今ではGDPの規模が違くので直接比較はできないが、今も相当に大きことは間違いない、そしてこのアメリカから得た貿易黒字の715億ドル=10兆円分の通貨が日本社会に入ってきて日本社会のお金が回っている(p176)

・貿易黒字というと聞こえはいいが、要は自国の富は持ち出しであり、その代価として他国の通貨が貯まっていくに過ぎない、これは自国を豊かにするわけでなく自国の物価を押し上げるだけ、だから、貿易で世界中の国を豊かにするには、輸出入を均衡させるのが最も理想的である(p207)