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第三次世界大戦はもう始まっている (文春新書)

第三次世界大戦はもう始まっている (文春新書)の写真

・ウクライナの NATO 入りは絶対に許さないとロシアは明確に警告を発してきたにもかかわらず、アメリカ と NATO がこれを無視したことが 今回の戦争の原因である、とミヤシャイマー(戦略的現実主義の論客)はコメントしている(p18)

・ NATO の東方拡大は、2つの 画期があった、1999年(ポーランド、ハンガリー、チェコ加盟)と2004年(ルーマニア、ブルガリア、スロバキア、スロベニア、エストニア、ラトビア、リトアニア)である、ロシアは不快感を示しながら受け入れた、その上で、2008年4月のブカレストでのNATO首脳会議で「ジョージアとウクライナを将来的にNATOに組み込む」ことが宣言された、2014年2月に「ユーロマイダン革命」が起きたのを受けて、ロシアはクリミアを編入した(p21)

・広義のロシア「スラブ」の 核心部は、 ロシア(大ロシア)ベルラーシ(白ロシア)ウクライナ(小ロシア)から成るが、ベルラッシュとウクライナの分離独立、 すなわち 講義のロシアの核心部が分裂することまで 受け入れた、ソ連邦が成立した1922年以前に、 ウクライナ も ベルラーシも国家として存在したことがない (p29)

・今の状況は、 強いロシアが弱いウクライナを攻撃している、と見ることができるが、 地政学的にとらえれば「 弱いロシアが強いアメリカを攻撃している」と見ることもできる(p32)

・第二次世界大戦時に自ら 多大な犠牲を払って ドイツ国防軍を打ち破り、 アメリカ 高黒 グロ イギリス・カナダの連合軍によるフランス 開放を可能にしたのも ソ連であった、ソ連は2000万人以上の犠牲者を出しながらナチスドイツの悪夢からヨーロッパを解放するのにアメリカ以上に貢献した、ところが 冷戦後の西側は、 その歴史をすっかり忘却してしまったかのような振る舞いを ロシアに対して してきた(p33)

・ アフガニスタン、 イラク、 シリア、 アメリカがこれまで行ってきた戦争は、弱小国に対する戦争であった。 それに対して 今回、 大国のロシアが事実上 アメリカを敵に回している、 これは大きな歴史的転換である(p35)

・ロシアは軍事技術 において アメリカに対して一定の優位に立っている、空母キラーと呼ばれる「超音速ミサイル」の分野ではロシアがアメリカに対して4年は先んじていると言われている、アメリカの軍事力の中心にある「 空母」 もすでに 時代遅れの 代物になっている可能性が大きく、 日本を含めて各国がアメリカから 押し売りされている 戦闘機 F 35 も、実戦できちんと 機能するかが疑わしい と言える(p37)

・ ウクライナは、西部に「ウクライナ東方教会」の信徒、中部に「 ギリシア正教」、東部にロシア系 住民、の3つの住民集団を抱えている、3つの地域はあまりにも異なっているので、ソ連が成立するまで、ウクライナは国家として存在していなった(p41)ヤヌコビッチ政権崩壊以降、 ウクライナ東部では、言語的・文化的にロシアに近い住民が攻撃にさらされた、 だからこそ プーチンはウクライナにいる ロシア人の保護を主張してきた(p43)

・ アメリカでは裁判が多く 企業活動でも 法的手続きが膨大にある、 そこで弁護士が手にする 膨大な 報酬も GDP に含まれる、 それに対して正直な人が多い 日本では訴訟も弁護士も少ない、その分 日本の GDP はアメリカより少なく 計上されるが、どちらの社会が生産的であろうか(p67)

・ ヨーロッパとロシアは経済協力を大いに進めるべきである、 ここが ヨーロッパとアメリカの違いである。 アメリカとロシアの経済的な結びつきはほとんどない。 経済制裁によって ヨーロッパとロシアは互いに傷つけ合うことにしかならない、 その最初の象徴 が 天然ガス 海底パイプライン「 ノルド・ストリーム2」の停止であった(p71)

・ヨーロッパとロシアの接近、 日本とロシアの接近、 ユーラシアの再統一はアメリカの戦略的利益に反する、 そこで 平和的関係が築かれてしまえばアメリカ 自身が「 用済み」になってしまうからである。 アメリカ軍のプレゼンスを維持するために、 ユーラシアにおいて アメリカ軍が必要とされる状況を無理にでも持続させるために、 アメリカはユーラシアにおける軍事的・戦略的緊張を維持する必要がある(p73)

・国連総会での対ロシア 決議 や G 20での議論を見ても、 世界の大半の国はむしろ ロシアの勝利を望んでいるようにも見える。彼らは「西洋の傲慢さ」にうんざりしている(p89)

・ウクライナに関心があるのは 三国 だけで、その三国にとっては ウクライナは特別な存在である。歴史的で明白な理由から、ドイツとポーランド、 そして不可解な理由からスウェーデンがウクライナに関心を持っている、 この三国はウクライナに関して自分たちに都合のいい 政策を追求するために EU を利用した(p95)

・アメリカにおける平等という思想は、あくまで 白人同士における平等であり、 家族構造に由来するものというより「 人種主義に由来するもの」である(p122) 黒人も平等となれば 白人同士の平等という感情は崩れ去ってしまう、 (p124)

・ アメリカで「新自由主義 ナショナリズム」が、国内産業・労働者階級・社会保障制度を破壊し、 生活水準を低下させ、ついには 平均寿命まで低下させたという現実がある(p129)

・ ロシアは経済的に弱体した貧しい国なのでヨーロッパによる経済制裁に耐えられないだろうと みられていたが、 進行から1ヶ月以上経って明らかになったのは、 ロシア経済の耐久力である。 ロシア 通貨 ルーブルは一旦は暴落したものの 現在はほぼ通常レベルに回復している、 さらに 戦争勃発 時に ロシアから逃げ出した 多くの ロシア人も再び国に戻ってきている、 この戦争は長期的なものになることを示唆している、 その意味でも今の戦争は第一次世界大戦を彷彿とさせる、 イデオロギーや思想をめぐる対立でない点でも第二次世界大戦 よりも 第一次世界大戦に近い(p139)

・ 今アメリカがロシアの軍事的失敗を喜んでいるのは明らかである、 ロシアに対する経済制裁によって、 ヨーロッパ経済、 特に ドイツ 経済が麻痺していくことについても密かに満足感を味わっている、 しかしそのこと以上に中国に支援された「ロシアの経済的抵抗」によってアメリカ主導の国際秩序が窮地に追い込まれていることを恐れている(p141)

・アメリカの戦争の真の目的は、アメリカの通貨と財政を世界の中心に置き続けることにある、 だからこそ早期の停戦を目指すのではなく この戦争にどんどん突き進んでいて、この戦争にさらに深く コミットする覚悟でいる(p142)

・この戦争から得られる教訓として、 ウクライナ軍の一定の成功から「戦車は時代遅れの兵器である」ことが明らかになった。アメリカがウクライナに供与した「 ジャベリン」 など、携帯式対戦車ミサイルによって 戦車の弱点が露わになってしまった、 この事実はロシアのように 陸地での戦いを得意とするランド パワーにとっては深刻である。 アメリカは シーパワーであるが、 超音速ミサイルの存在によって 空母の弱点があらわになった 、つまり ロシア側が戦車という時代遅れの兵器を抱えている一方で、 アメリカ側は 空母 という時代遅れの兵器を抱えている(p144)

・軍事的な意味での「 真のNATO」は、アメリカ・イギリス・ポーランド・ウクライナ、 そして おそらく スウェーデンからなっている。 ここに ドイツとフランスは入っていない(p148)

・戦争が 現時点で 終結すれば、 ロシアは、ヘルソン州からドンバス地方までの広大な領土を奪取したことになる、クリミア半島への水の供給源確保にも成功し、 アゾフ海は「ロシアの湖」のようになっている。領土を少しずつ 獲得している点では 18世紀のヨーロッパにおける戦争に似ている、 現時点では ロシアが勝利を手にしつつあるが、 これはアメリカには 許容できないことである、 だからこそ この戦争はまだまだ続くことになる(p149)

・この戦争は「西洋の民主主義 VS露中GA代表する専制主義」という構図で捉えられている。 ロシアによるウクライナ侵攻に対して、1) 非難して制裁を科す 国(米英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、欧州、日本、韓国)、2) 非難するが制裁はしない 国、3) 非難も制裁 もしない国、4) 支持する国(ベネズエラ、シリア、ミャンマー、中国、インド、ブラジル、南アフリカ、イスラム諸国)がある(P153) このことから、 ロシアは孤立など全くしていない(P160)

・ ロシアの経済力を ルーブルではなく「 エンジニア」で測るとすれば 2014年からの制裁に耐えられたように、 2022年の西側による制裁にもロシアは耐えられるのではないかと考えられる、 「経済の真の柔軟性」とは 銀行 システムや金融商品を開発する能力ではなく、生産活動の再編成を可能にするようなエンジニア・技術者・熟練労働者にこそあるのではないか(P187)

・対ロシア制裁によって、 ドイツは自国産業の崩壊というリスクに直面するだろうし、 ヨーロッパの中でロシアへの最大投手 国である フランスも ロシアでの権益を失い始めている、アメリカが最も懸念していたのはドイツを中心としたヨーロッパがアメリカから自立することであったが、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインを停止させることに見事 成功した(P197)