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経済のニュースは嘘ばかり

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本書は、経済ニュースの分かりやすい説明をそのまま受け入れず、制度の仕組みや数字の関係から考え直すことを促す。著者が繰り返し問題にするのは、円安、金利上昇、人口減少などを、一律に悪いものと捉える見方である。誰にどのような影響が及ぶのか、経済全体と個々の立場を分け、政策や報道の背景にある利害にも目を向ける必要があると論じる。
税制では、所得控除と税額控除の違いが取り上げられる。課税対象となる所得を減らす仕組みと、計算された税額から差し引く仕組みでは、減税効果の現れ方が異なる。著者は税額控除の効果を重視し、ふるさと納税の制度づくりへの自身の関与にも言及する。税の議論では、控除という言葉だけで判断せず、何から、どのように差し引くのかを理解することが重要になる(p25)。
経済成長について、著者は日本の長期停滞の一因を政府・民間の過小投資に求める。高市政権の政策を、従来投資が少なかった分野へ政府が資金を投入し、民間投資を引き出す動きとして評価し、株価上昇もその期待と結び付ける(p43)。ただし、政権の方向性が実際に表れるのは予算であり、本書では二〇二七年度予算の策定まで、市場が見通しに左右されると予測している(p47)。
公共投資を判断する基準にも問題を提起する。将来の便益を現在の価値に換算する「社会的割引率」が高ければ、長期的な効果を持つ事業は評価されにくくなる。著者は、日本で長く使われてきた四%という水準が投資を妨げたと批判し、実質金利との関係から見直すべきだと主張する。投資額だけでなく、事業を採否判断する計算上の前提にも注目している(p61)。
財政と金利については、金利の上昇だけを見て危機と判断することに異論を唱える。本書で挙げる名目成長率約四%、長期国債金利約二・八%を比較し、成長や税収の増加を伴う金利上昇なら、財政破綻への懸念は当たらないと強く主張する(p52)。一方、利上げで利益を得る主体として銀行を挙げ、日銀当座預金への付利を通じて、政策金利の上昇が銀行収益に結び付く仕組みを指摘している(p127)。
著者が支持する「高圧経済」は、強い需要によって企業の投資などを促す考え方である。そのために財政・金融面の緩和を続け、一定の物価上昇を許容する政策を重視する(p131)。第一次石油危機の物価高についても、原油価格の上昇に加え、それ以前の為替介入と通貨供給の増加を重く見る。著者は、国内の物価や景気を理解する際、資源価格だけでなく金融政策の影響を検討すべきだと論じる(p137、p152)。
円安についても、輸入価格上昇という負担だけでは捉えられないとする。輸出企業の円換算収入、名目成長率、税収への効果を重視し、経済全体ではプラスになるとの立場を取る(p161、p179)。トランプ関税については、自動車メーカーが輸出価格を引き下げ、円安がその減収を一部補うことで、輸出への打撃を抑えたと説明する。関税の影響は、税率だけでなく、企業の価格設定と為替を合わせて見る必要があるという(p155、p168)。
円安の影響を、フローとストックに分ける視点も示される。著者は、経済活動や所得への効果に加え、外国為替資金特別会計が保有する外貨資産に含み益が生じる点に注目する。円買い介入では、その一部が実現益になると説明する(p163)。ただし、巨大な為替市場に対して介入規模は限られるため、相場への効果は長続きしにくいとの見方を示している(p171)。
貿易収支についても、赤字を直ちに弱さと結び付けない。著者は、都道府県別の貿易収支を仮に計算すれば、所得が高く地方から物品を購入する東京は、大幅な赤字になるだろうと例示する。輸入超過という数字だけでは、その地域の豊かさや経済力を判断できないという指摘である(p175)。
人口減少への対応では、人口そのものを増やすこと以上に、一人当たりの生産性を高める技術を重視する。農業、輸送、配送などでAIやロボット、センサーを活用し、人手不足を補うべきだと論じる(p191–192)。人口増加率と一人当たり実質GDP成長率は単純には結び付かないとして、移民による人口増より機械化・無人化を優先する立場を示す(p195)。また、AIの進展によって頭脳労働と肉体労働の相対的な価値が変わる可能性にも言及している(p96)。
情報の受け取り方では、SNSが情報提供者と視聴者を直接結び付けた点を評価する。著者は、新聞やテレビにも誤報がある以上、媒体の種類だけで正しさを判断できないと考える(p128)。本書を貫くのは、見出しの印象に頼らず、制度、比較する数字、利益を得る主体を確かめる姿勢である。その姿勢は、本書の強い主張そのものを読む際にも当てはめられる。著者の見解と、その根拠となる事実や推計を区別することが、経済ニュースを自分で考える出発点になる。