・ありとあらゆる職業がAIに代替されると断言することは早計である、人間を使ったほうが安上がりな分野では、AIで代替することに経済的利点がない、そういう分野では生成AIは「アイオロスの球」や平賀源内の「エレキテル」のような「興味深いおもちゃ」にしかならないだろう(p17)
・私たち人類は、かぎ爪も牙もない非力な動物だが、どんな哺乳類にも負けない身体能力がある、それは長距離走に適した身体的特徴が出揃っている「くびれた腰」や「長い手足」など、現代人と変わらない体つきになっていた(p33、44)走っている人の髪(ポニーテールの女性の例)は激しく上下左右に揺れている、本来なら頭部全体に同じだけの揺れが加わっている、それでも人が目を回さないのは、三半規管が敏感に揺れを察知して、それを打ち消すように、首や目の筋肉が働いているから。歩くだけなら、これほど高性能のジャイロセンサーは必要ない(p46)
・直立二足歩行(大きな脳よりも柵に発達)なら、四つ足歩行に比べて日光の当たる面積が小さく、太陽熱による体温上昇を最低限にできる、肉食獣が暑さでへばっている日中にも活動しやすくなる。外敵に襲われるリスクを減らしながら、餌を求めて歩き回ることが可能になる(p40)
・火を通すとあらゆる食材が柔らかくなり消化が容易になる、澱粉質もタンパク質も吸収されやすくなる、火を通した餌を与えると、牛や羊の家畜は成長が速くなり、犬や猫のペットは太りやすくなる(p62)野生のチンパンジーは1日の大半を咀嚼に費やすが、火の通った柔らかい食べ物を食べれば時間を節約できる、その分、餌の探索、異性への求愛、縄張りパトロールに時間を使える(p66)
・大抵の哺乳類には「閉経」がなく、寿命の直前まで妊娠可能、ヒトに閉経があるのは、ある年齢を超えると自分自身が赤ん坊を産むよりも、孫の世話を手伝う方が効率的に遺伝子を残せるからと考えられている(p77)
・狩猟採集民族が農耕定住生活を始めると、体格・身長・骨密度の全てが低下する、身長は栄養状態に敏感に反応する指標である、幼少期に栄養失調を経験すると、人は身長があまり伸びない、体のサイズが小さければそれだけ基礎代謝が少なく、食糧難に適応して省エネの肉体になる、農耕開始後に身長の低下が見られたのは、人々の食生活が貧しくなったことを意味する(p88)
・文字は詩歌を書いたり歴史を記すために生まれたのではない、商業記録をつけるための簿記から、文字は生まれた(p100)文字は取引を円滑にして、生存に欠かせない物質を世界の隅々にまで行き渡らせるためのプラットフォームである、今の20代以下の若者がインターネットのなかった時代を想像しづらいことに似ている(p104)
・活版印刷は世界を変えた発明である、歴史を変えた発明品(火薬、羅針盤など)は戦場や航海に出ない人々がその威力を味わうことは難しかった、一方、印刷物は国王から貧民まであらゆる人が手にする、社会の全ての階層に影響を与えて変化をもたらせたという点で印刷技術は特別である(p108)グーテンベルクの偉大さは、印刷を事業として成り立たせたことに尽きる、1)技術の改良、2)商売の仕組み作り、という2つの側面に分けられる(p129)
・ヴェネツィアでは欧州における情報伝達技術の中心地となり、ルネサンス期のシリコンバレーのような場所になった、一方、イスラム圏では活版技術は拒絶された、1485年にはオスマン帝国ではイスラム教徒を対象に、アラビア語の印刷物を禁止した、印刷機の設置が許されたのは、200年以上もたった1727年であった(p134)
・欧州で先進的な会社(有限責任、株式の譲渡・売買)を作ることができたのは、簿記・会計知識の普及がある。その後に3世紀をかけて欧州人は世界を制覇した、それを可能にしたのが「帆走軍艦・大砲・銃」の力であり、それを用立てるカネの力であった(p144)
・欧州の主要地域を再び統一する強大な王(フランク王国のカール大帝)に対して、ローマ教皇レオ3世は、偉大なる西ローマ帝国の復活だと見做して、800年カールにローマ皇帝の帝冠を与えた、この時に東ローマ帝国(ビザンツ帝国)も健在だったので、ローマ教会はビザンツ帝国の従属から脱して、11世紀までに、キリスト教は東方ギリシア正教と、ローマ・カトリックに分裂した(p145)
・ダーウィンの偉大さは「自然選択説」を理論化したことにある(p189)はしごを登るような直線上の進化ではなく、共通の祖先からんお「枝分かれ進化」である。人も昆虫も微生物も過去のどこかでの時点で枝分かれした遠い親戚で、横並びの間柄である。進化しているからといって、優れているとは限らない(p190)
・マルクスの「資本論」では革命に至るまでの過程(=資本主義社会はいかにして崩壊するのか)を理論化した本である(p205)賃金が高騰した場合、資本家は生産効率の高い機械設備に投資する、これは価値を生む生産設備(=人間)を価値を生まない設備(=資本)に置き換えたことになる、資本家は利潤を確保するために、ますます労働者からの搾取を増やさざるを得ず、また機械設備に投資せざるを得なくなる、生産効率の高い工場との競争に敗れて、小規模な工程を営む職人は誰かに雇われた賃金労働者(=無産階級)にならざるをえない、こうして機械への置き換えと無産階級が進んだ先に、資本主義は行き詰まると予言した(p207)
・なぜ産業革命はイギリスからで18世紀後半だったのか、イギリスでは賃金水準が上がり燃料の価格が下がっていた、労働を機械に置き換えることで、利益を出せる水準に達したのが、18世紀後半であった。当時のイギリスでは、紡績機や蒸気機関などの機械を導入することで人件費を節約して儲けを出せた、それを阻止する権力者・社会制度も他国より弱かったので、発明が発明を呼ぶ状況にいち早く到達した(p214)ロンドンよりも燃料費の安い、ニューキャッスルのような炭鉱の近くで産業革命が始まった(p231)イギリスは、高い賃金と安い燃料費という条件で、歴史上初めて「労働を機械に置き換えることで利益が出せる地域」になった(p232)
・神聖ローマ帝国の最後の皇帝フランツ2世は、産業革命に抵抗した権力者の典型である、ナポレオン戦争に巻き込まれた彼は、1805年にアウステルリッツの戦いで敗れ、帝位を放棄、神聖ローマ帝国は消滅した。しかしその後もオーストリア帝国の皇帝フランツ1世として君臨した(p250)フランツは技術革新に反発し、1802年ウィーンでの工場新設を禁止し1811年まで続いた(p250)
・いち早く産業革命を成し遂げたイギリスや、18世紀初頭の時点で世界2位の炭鉱業を持っていたベルギーでは鉄道網が国土を覆い尽くしていた、オランダ・ドイツ・フランスなどは産業革命では2番手として追いかけたが、その状況が鉄道網に表れている(p253)
・日本は低賃金のた目に、労働を機械で置き換えるという経済的インセンティブがなかった、当時の欧米の技術は高賃金な経済環境で生まれたものであり、そのままでは日本で利益が出なかった、そこでイギリスやインドで一般的だった1日11時間勤務でなく、11時間2交代制が日本では採用された、こうすることで工場の稼働1日あたりの機械の購入価格を実質半額にできたから(p257)戦後日本の経済成長は、明治時代とは逆で、低賃金に合わせて機械を改良するのではなく、高賃金でしか利益を出せない高効率は最新技術をあえて導入した(p258)
・物質的な豊かさとは「あらゆるものがタダ同然になっていくこと」と定義できる、言い換えれば、単位労働時間あたりに入手できる財が、質・量ともに増えるとも言える(p262)
・森林の面積と薪エネルギーから推定した日本列島が収容可能な人口の上限は、2000−4000万人である、1870年の人口は3500万人であった、現在は1億2808万人(2008)が暮らしているが、これが可能になったのは化石燃料に頼ったから、森林を燃やす代わりに、数億年前の森林(化石燃料)を燃やすことで、私たちは戦後の豊かな日本を作った、これからは自然エネルギー(水力、太陽光、風力、地熱、波力、潮力など)を効率よく利用する方法を発見しなければならない(p270)
・IBM (インターナショナル・ビジネス・マシーンズ)は、装置を販売でなくリースすることで定収入を確保し、パンチカードで利益を上げるという「レンタルと販売」のビジネスモデルで台頭した(p289)
・現在のコンビニでは驚くほど新鮮なサラダが買える、驚くほど手の込んだ製品を100円ショップで買える、小売業と背後にある製造業、物流の効率化のおかげである、それを可能にしたは、コンピュータシステムである(p325)
・マイクロソフトは1981年にマッキントッシュ用のOSの一部を開発する契約を結んでいた、1987年時点でマイクロソフトの売り上げの半分はマック用のソフトウェアからもたらされた、この経験からGUIのソフトウェア開発のノウハウをつみ、やがてはWindowsに結実した(p334)
・1990年12月20日に世界で最初のウェブサイトをアップロード、さらに1991年8月6日にそれを全世界に公開した、インターネット時代が始まった記念日を選ぶとしたら、この日となる(p361)1995年7月にAmazonがオンライン書店としてサービス開始、日本では2000年であった(p364)
・2008年に「iPhone 3G」が発売されて(Facebook,Twitter日本版公開)、スマートフォンの時代が幕開けした、スマホ普及率は2010年は4.4%、2015年に50%超、2021年に90%を超えた(p366)Microsoftの Teamsは、2017年(p367)
・機械が人間の仕事を奪う、のではなく正しくは「機械を使える人間が、機械を使えない人間の仕事を奪う」(p400)
・革新的な技術は、利益を出せる範囲でしか普及しない(p401)
・生成AIの欠点は、1)創造性(革新的創造性が無い、組み合わせ的創造性と探索的創造性は有る)、2)人の感情を理解できない(p409)AIの技術は、権力者や資本家に独占させるべきでない、誰もが自由に研究して、使用できる、悪用した場合は、その結果に応じて罰せられる、という技術であるべき(p419)
・色は、人の脳内にしか存在しない概念である、この宇宙には無色透明な電磁波が飛び交っているだけ、網膜に届いた特定の波長の電磁波を、脳が「色」として認識しているに過ぎない(p440)
・光合成の能力を身につけたシアノバクテリアが登場したことで、地球は強い酸素で満ちた惑星に変わってしまった、私たち真核細胞生物は、その環境に適応した結果として生まれた、もしシアノバクテリアがいなければ、多細胞生物が生まれたかどうかさえ分からない(p454)
:知能とは、複雑な課題を与えられたときに、その解決策を出力する能力である(p456)月面に同胞を送り込み、インターネットを敷設した動物は地球上でヒトだけ、しかしこれは知能の高さではなく「集合知」によるもの(p460)
・これからもヒトとテクノロジーは対立するのではなく、共生する。新たなテクノロジーのある環境に適応するだけ、今まで何十万年もそうしてきたように(p485)